東京からコペンハーゲンに移住するという話は、子どもが生まれるずっと前から、妻との間で何度も出ていたテーマでした。
自分は日本で30年以上、ほぼ人生のすべてを過ごしてきました。その中で、日本で暮らす良さも大変さも、ある程度は経験してきたと思います。
東京は本当にすごい街です。食べ物はおいしくて種類も多く、子ども向けの遊び場やイベントもたくさんあります。便利さで言えば、世界でもトップクラスだと思います。新しい商品は次々に出てくるし、欲しいものはだいたいすぐ手に入る。そういう意味では、東京での生活はとても刺激的で、楽しい部分もたくさんありました。
ただ、長く住んでいるうちに、少しずつ疲れを感じるようにもなりました。
東京は、良くも悪くも消費社会の色がとても強い街だと思います。最初は買い物も楽しいし、新しいものを見るのも面白い。でも、だんだんそれが疲れに変わっていきました。電車の中、駅、街中、タクシーの中まで、どこにいても広告が目に入ってきます。
気づいたら、自分が「働いて、買って、また働いて、また買う」ことを繰り返しているだけの、社会の中のロボットみたいに感じることがありました。
もう一つ大きかったのは、ワークライフバランスです。
自分なりに子どもとの時間を大切にしようとはしていましたが、朝8時から夕方6時くらいまで働いていると、平日に家族とゆっくり過ごす時間はどうしても限られてしまいます。キャリアとしては悪くなかったと思います。でも、その代わりに失っているものも大きいのではないかと感じるようになりました。
子どもと過ごせなかった時間は、あとから取り戻すことができません。そのことを考えるようになってから、今の生活をこのまま続けていいのかという気持ちが、少しずつ強くなっていきました。
買い物のあり方についても、昔とは変わったなと感じます。昔は必要なものを買うという感覚が強かったのに、今は常にセールやキャンペーンに囲まれている気がします。週末セール、期間限定セール、ブラックフライデー。日本では感謝祭を祝う文化はないのに、ブラックフライデーだけはすっかり定着しているのも少し不思議でした。
もちろん便利だし、安く買えるのはありがたいです。でも、ずっと「今買わないと損」という空気の中にいると、正直かなり疲れます。
妻から聞いていた話や、自分で調べた情報を通して、デンマークでの暮らしはもう少しバランスが取れているように感じました。もちろん、実際に住んでみないと分からないことはたくさんあります。それでも、家族との時間を大切にしながら、もう少し持続可能なペースで暮らせるかもしれない。そう思うようになりました。
自分が本当に大切にしたいものは何なのか。
子どもと過ごす時間。家族で一緒にいる時間。毎日をただ消費するのではなく、もう少し落ち着いて生活すること。
そういうものをもう一度見直したいと思ったことが、移住を決めた大きな理由の一つです。
そして今、私たちはデンマークのコペンハーゲンで新しい生活を始めています。
新しい言語を学ぶこと、新しい人と出会うこと、違う文化に慣れていくこと。もちろん不安もあります。でも、それ以上に新鮮さがあります。
今はまだ、分からないことだらけです。何もかもが新しくて、慣れないことも多いです。でも、その不慣れさも含めて、どこか楽しい。
東京で感じていた疲れから少し離れて、もう一度、自分たちらしい生活を作っていく。今はそんなスタート地点に立っている気がします。